

神様のメモ帳7 [★★★]
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クリスマスが近づき、探偵事務所のそばにあるホームレス公園の改装工事が始まろうとしていた。そんなある日、事務所にやってきた依頼客は、なんと売り出し中のアイドル歌手。子供の頃に失踪した父親そっくりのホームレスをその公園で見かけたのだという。
父親捜しの過程で浮かび上がる、エアガンで武装したホームレス狩り集団。そして、なぜか探偵団を離脱する少佐。
「これは自分ひとりでかたをつける」
やがて──事件が起きる。僕が探偵助手として体験した中で、最も奇怪なあの事件が……戦慄のニートティーン・ストーリー、第7弾!
ちょっとできすぎたほどいい話でした。後味は悪いくらいなんだけど、心にグッときたのはホント。
こんなのってないよ……って思いながら最後まで一気に読まされました。どことなく初期の神メモらしさがあったなあ。
ニートたちにとって居場所がない勤労感謝の日を乗り越え、クリスマスが迫る時期に舞い込むひとつの依頼。今話題のアイドル歌手・ユイから、現在ホームレスの父親を探してほしいというもの。それと同時期に活発化したホームレス狩り。その武装集団に心当たりがある少佐。そして起こった奇怪な事件。数ある思惑が交わり、アリスが導きだした答えはとても悲壮なものだった。
正直、ギンジさんがここまでした理由は理解はできるけど、とても納得できるものじゃなかったです。
せめて一目でも会ってやれば……と思うとユイが浮かばれません。そりゃあ引け目はあるでしょう。見捨てたも同然の娘が今をときめくアイドル歌手となり、片や自分はホームレス。住む世界が違いすぎるし、娘から恨まれても仕方ありませんからね。でも、大切な娘だってずっと思ってたなら、どうしてそうした……。彼の不器用な生き様は本当に胸が痛かった。
でも遺されたメッセージを受け取るしかなかったユイが、きちんと見てくれていた父親に対してやったことは、すごく素敵なことだった。この温かな演出はニクい……まったくできすぎたシナリオです。
そして今回単独行動に走った少佐のことも。
ニート探偵事務所の面々は、付き合いはよくても関係性はドライなのがここでも出てくる。身内として情はなくはないけど、事実に忠実というか、たとえばなにかの事件で家族が犯人だったとしても遠慮なく警察に突き出しそう(まあ当たりまえなんだけど)っていうかそんなの。
ホームレス狩り集団に当たりをつけていた少佐も、周りに頼ることなく自分の力だけで解決しようとするんだけど、ナルミがちゃんと図々しく出張ってくれる。やはりナルミはこうでなくては。少佐はたしかに技能に優れている人間ではあるが、所詮ただの軍人気取りのニートのひとりに過ぎない。勝算のない戦いにひとりで当たって行っても、無駄な犠牲を払うだけなのだから。
あとここにきてアリスが無性にデレてきてるのはなにかの兆候なんでしょうか。嫉妬おいしいです。
久々の長編でしたけど、やはり一篇を大きくやってくれたほうが肌に合うなあと思いました。非常におもしろかったです。
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