

東京ヴァンパイア・ファイナンス [★]
電撃新人ラッシュ、トリは新人賞四冠で「ロウきゅーぶ!」と同じく銀賞受賞作のもう片方。
面白かったです。ちとラノベには不向きな内容や設定(メインキャラが全て成人越えだったり)だと思いますが、そういうジャンルもありなのかなという新鮮さを感じました。
だけどラストのぐだぐだがちょっといただけなかった、と思います。
東京ヴァンパイア・ファイナンス (電撃文庫)

真夜中に出没し、超低金利で高額融資をする<090金融>ヴァンパイア・ファイナンスを営む万城小夜。今夜も獲物=融資客を求めて蠢く。
デート終わりの送りオオカミをめざす日野健壱。
性転換手術をしようとしている大田美佐季。
振り込め詐欺グループに復讐を目論む〈やえざくらの会〉の老人たち。
ドラッグ・デザイナーを辞めたがっている濱田しずか。
都会のアンダーグラウンドで息する彼らは小夜に出会い、融資をうけるかわりに自身の問題に首を突っ込まれまくる。そして、債務者それぞれ衝動や欲望をフルスロットルにし、ひしめきあって無限に増殖するのだった──!!
アンダーグラウンドの世界で繰り広げられる、金と欲望の痛快な群像劇!
念願の送りオオカミにたびたび失敗する冴えない狼男、
かつては振り込め詐欺の標的になってしまい「意趣返し」の形で復讐を誓う老人ゾンビたち、
愛しの人のために性転換を覚悟するフランケンシュタイン、
情報屋を副業にドラッグデザイナーを営むスイーツ狂の魔女、
そして、彼らのまえに現れては誰もが最初は訝るトレイチ(10日で0,1%)の超低利子で貸し付けるヤミ金融「ヴァンパイア・ファイナンス」を名乗る万城小夜。
夜の都会・アンダーグラウンドに蠢く彼らの事情にばんばん首をつっこみ(建前は全面バックアップだとか完全アフターケアとか)、小夜のその破天荒っぷりが爽快痛快な群像劇――となっております。
詐欺やヤミ金、暴力団など世の中の「必要悪」という世の中では水面下となるダークな部分をリアルに描く手腕はやはり相当なものだと思います。新人賞四冠の名は伊達ではありません。
一癖ならず二癖ある登場人物たちも小夜との出会いをきっかけに、各々の目的を果たすため前進するところに熱いものを感じました。
「ぬはッ、はっ、ぬは、ぬははははははははははははッ、おまえら都市の怪物どもはぐるぐる溶けて混ざってバターになれ。ひしめきあってぶつかりあって、もっともっと無限に殖えろ!」常時ハードスケジュールで次々依頼人の下へ駆けずり回り、賑わせ、そこに繰り広げられる人間ドラマを心の底から楽しんでいる小夜はかなり好感持てるキャラだと思います。不敵に笑む男勝りな小夜が素敵。
そんなこんなで終盤までは楽しく読めていたんですが、終章で息切れ状態に。
いままでかなり痛快でポップな雰囲気だったのに、若干シリアス一変。なんというか蛇足かなと。
返済方法がかなーり好みなかたちに収束したのに、この終わり方はなんか肩透かしくらいました。ううむ。
あとそれぞれの群像劇が一つに繋がると思ったのですが実際そうでもなくて、終盤ではほったらかし状態と言ってもいいかも。
なんというかもったいないと思いましたねー。もっともっとバカっぽくカオスにしても良かったんじゃないかな。しかし作者さんが大量投稿者なので一つの物語に集中できなかったのかな……と感じます。
面白かったんだけど、なにか足りないと感じた一冊です。読むか読まないかはそれぞれですが、オススメ。